名古屋高等裁判所金沢支部 昭和34年(う)130号 判決 1959年8月25日
被告人 道井博 外七名
主文
原判決中被告人道井博、同林弘、同石崎武義、同桑田和夫に関する部分を破棄する。
被告人道井博を懲役壱年に処する。
被告人林弘を懲役七月に処する。
被告人石崎武義を懲役四月に処する。
被告人桑田和夫を懲役四月に処する。
被告人林弘より押収にかゝる花札一組(証第一号)手提袋一個(証第四号)を没収する。
被告人館野源次、同浜浦重松、同鍜治美作、同笠木清吉の本件各控訴をいずれも棄却する。
理由
(弁護人らの控訴趣意について)
職権を以て原判決における右被告人四名に対する没収に関する法令適用の当否を調査するに、原判決においては被告人道井博を賭博開張図利罪、被告人林弘同石崎武義同桑田和夫を同幇助罪として処断すると共に刑法第十九条を適用し押収にかゝる証第五号乃至証第十号の各金員につき右被告人四名及び常習賭博罪で処断せられた他の共同被告人全員よりこれらを没収する旨、並びに押収にかゝる証第十六号の金員を被告人林弘より、証第十三号の金員を被告人桑田和夫より夫々没収する旨宣告していることが明らかである。而して記録によれば右証第五乃至十号の各金員はいずれも本件賭場における賭銭であつて且つ所有者不明のものであることが認められるところ、かゝる賭銭は賭博罪又は常習賭博罪における組成物件として刑法第十九条により没収すべきものではあつても、賭博開張図利罪又は同幇助罪については同条第一項各号のいずれにも該当しないものと謂わねばならない。そうだとすれば原判決が右証第五乃至十号の各金員を没収するに当り同条を適用して共同被告人全員よりこれらを没収する旨言渡したことは本件常習賭博罪の共犯者たる共同被告人館野源次、同浜浦重松、同鍜治美作、同笠木清吉に対しては相当であるが、賭博開張図利罪を認定した共同被告人道井博、同幇助罪を認定した共同被告人林弘同石崎武義同桑田和夫に対しては違法であると謂わねばならぬ。
(その余の判決理由は省略する。)
(裁判官 山田義盛 辻三雄 干場義秋)